プロローグ
- 2025年3月7日
- 読了時間: 2分
更新日:2025年8月31日
幼い頃、私は両親からたいへん可愛がられていたと思う。
いろんな習い事を経験させてもらって、運動神経以外は大体褒めてもらって、悪いことをすればちゃんと叱ってももらって。
その愛情を一身に受け、すくすく育っていく可能性の塊みたいな存在に、両親はさぞ期待を膨らませていたことだろう。
大学まで卒業して一人立ちしたかと思ったら、休職した末にそのまま退職して実家に戻ってくるなんて、夢にも思っていなかっただろう。
それでも、最初は本当に優しかった。
いや、世間からしたら甘かったと評されるのかもしれない。
環境が合わなかったのだろうと言って、長い間見守ってくれていた。
厳密には、再就職に向けて動く気配も無ければ働かないなりの行動もしていないと、苦言を呈されることもあった。
それでも、面倒を見てくれていただけ優しかったと、今になって思う。
繰り返される苦言に耳を塞いで、出てくる食事を当然の権利みたいに貪っていたのが良くなかったと、今なら分かる。
ある日、とうとう実家を追い出された。
財布の中身もほとんど無ければ、働いていた頃の貯金も底を尽いている。
完全に油断していたから、スマホの充電も残り僅か。
うっかり置いてきてしまった充電器を取りに戻ろうにも、「仕事に就くまで連絡するな」とのお達しを受けたばかりで、家に入れてもらえる気がしない。
さすがにまずい。
今日はネットカフェで凌いで、日雇いの仕事でも何でも探すしかない。
焦ったものの、一晩明かせるほどの持ち合わせすら無いことに気づき、愕然としたところまでは覚えている。
――この後、私はどこで何をしたんだっけ?
なんの因果で、こんな状況になったんだろう――。